ガス業務以外にもシニア派遣のニーズがある仕事を開拓
シニアの就労意欲も実は高いと緒形憲社長は語る。
「定年退職して、最初の数カ月は悠々自適の生活も悪くないんです。しかし、気力も体力もあるのに何もすることがないと、次第に『また働きたい』という気持ちが高まってくる。一日中家にいると、男性の場合、奥さんの生活リズムを乱して煙たがられることも多いですしね(笑)。定年退職者は年金もありますから、お金が第一の目的ではありません。自分に合う仕事を選んで、マイペースで働くことができる派遣は、働きたいシニアのニーズにも合致しているのです」
だからこそ、シニアに適した仕事をいかに開拓するかということと、働きたい人と仕事のマッチングが重要になる。
東京ガスおよび関連会社の出身者が多い同社では、そのつながりをベースに、ガス関連を中心に業務を請け負い始めた。登録者も当初はOB中心だった。現在はそこを中心にしつつもガス関連以外に業務の幅を広げ、東京ガスOB以外の登録スタッフも増加。では、具体的にどんな業務が増えているのだろうか?
「おもしろいところでは、修理や宅配などに向かう車両の助手席に座っている仕事があります。駐車禁止対策として、車両で待機している人材が必要なんですよ。実際に運転をすることはあまりありませんし、移動中の話し相手にもなれる。体力も使いませんから、シニア向けの仕事といえますね。ほかでは、マンションの管理人も、真面目で信頼できる人間性が求められる仕事なので、意外と人手が不足していますね。さらに、改正フロン法の施行で、業務用エアコンや冷凍設備の定期点検が義務づけられました。経験のあるシニアが活躍できる領域ですから、当社としても積極的に営業をしています」
このように若手人材と競合しないニッチなニーズをうまく拾い上げることが、シニア層派遣事業を展開するうえでのポイントだという。助手席に座っているだけでの仕事は若手にとっては退屈かもしれないが、できるだけ体に無理のない仕事で社会とのかかわりを保ち続けたいと考えるシニアのニーズには合っている。
高齢者であることがウリになるケースもある。東京ガスでは電力自由化に伴い、電気販売の営業にも力を入れているが、ある店舗では、高齢社から派遣されている営業スタッフを「若い衆だけには任せられん! 電力侍四人衆」として、ポスターも作って売り出し中。現場でも指導的な役割を担い、頼りにされているという。
うまくニーズを掘り起こしてマッチングを図ればまだまだ仕事はあると緒形社長は言う。
構成/伊藤敬太郎
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