※この記事は2016年に取材・制作し、FeelWorksのホームページで公開されていたものを転載しています。
株式会社高齢社/東京ガスを退職した上田研二氏(現・高齢社最高顧問)が、2000年1月4日に創業したシニア専門の人材派遣会社。登録スタッフの募集条件は原則60歳以上75歳未満で、定年はない。請け負う業務は、ガス設備の保守・メンテナンスなどガス関連が多いが、最近では、マンションの管理人など、それ以外の領域にも幅が広がってきている。本社スタッフも嘱託で働くシニア層が中心だ。緒形憲社長は東京ガス、子会社社長を経て、65歳で定年退職後、高齢社に入社。2016年6月末から現職。2016年11月末現在、就労中・待機中の派遣社員数は789人、平均年齢は69.7歳、就労率は34.9%。本社スタッフは24人。働く人優先での経営を徹底するため、企業との資本関係はない。グループ会社に、同じくシニアが家事代行サービスを提供する株式会社かじワンがある。
高齢者の体調管理に配慮し、無理なく働ける仕組みを整備
仕事の紹介はあくまで働く人の都合優先だ。例えば、「通勤に時間をかけたくない」などの要望があれば、合致しない仕事を無理強いすることはしない。就労中の登録スタッフは、週3日程度の勤務で、簡単な業務が多く、月収は8~10万円程度がボリュームゾーン。高齢だけに体調を崩すリスクや急に親の介護が必要になることなどもあるので、2人で仕事を分担するワークシェアリングを採用するなど、マイペースで働き続けられる仕組みもしっかりと整えている。
また、派遣先では、行きがかり上、契約にない体力が必要な仕事を求められてしまう可能性もある。例えば、修理・点検の作業中などに「ちょっとここを押さえていて」と頼まれるようなケースだ。しかし、シニアにはちょっとした無理が体を壊す原因になるリスクもあるので、高齢社はそのような要望は断っているという。こういった点にも「働く人優先」の考え方が表れている。
さて、当コラムは「人を育てる」をテーマとしているが、シニア層に関しては、今から成長するということよりも「モチベーションを持って長く働き続ける」ことがより重要になる。一般論で言えば、定年前は正社員として重要なポストに就いていたシニア層も多いはずで、そのような場合、派遣社員という働き方で簡単な業務に従事すると、モチベーションを維持し続けられるのかという素朴な疑問が生じる。
実際、一般の企業で定年後の再雇用で働き続ける場合、上司気分が抜けず、年下の上司とうまくいかなくなるケースや、年収が大幅に下がり組織内の立場も変化したことですっかりリタイアした気持ちになってしまい、仕事に前向きになれなくなるケースもある。高齢社では、その点に関して特別な取り組みをしているのだろうか?
「当社でも、かつての部下が派遣先の上長というケースはありますね。ですから、『新入社員のつもりであいさつは自分からする』『かつての部下でも“さん”付けで呼ぶ』『過去の職位の話や成功談(自慢話)はしない』といったことは、就労時のお願い事項として登録スタッフのみなさんには伝えています。意識して取り組んでいることといえばそれくらいですね。もともと『働きたい』と思って登録してきた方々ですから、やる気を持って働き続けることは難しいことではないんです」
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