提案はすべて許可。失敗を恐れず挑戦することを推奨

前川:ビジネスとして取り組んでいるのは最先端のデジタル領域でありながら、経営は古き良き家族主義というイメージですね。
田中:私も確かに中にいておもしろいなと思いますね(笑)。WebやITを導入して効率化はどんどん進めていきますが、一方でここだけは守っていこうというのも頑固にある会社です。
前川:最近ではニフティなど、御社はM&Aにも積極的に取り組んでいますが、意識の浸透に関しては、同じように家族主義的なやり方をしているのですか?
田中:そうですね。M&Aをした会社はカルチャーが違いますが、そこに違いはあっても同じ方向を向いていこうというかたちで意識の浸透を図っています。経営陣は、ノジマからの出向もありますが、できるだけプロパーの方を引き上げるようにして、ともに経営を立て直すことに取り組んでいます。
カンボジアなどの海外でもやり方は同じですね。最初は現地のやり方に合わせていたのですが、うまくいかなかったので、今はノジマウェイをしっかりと浸透させることを大事にしています。
前川:チャレンジする風土を浸透させるのは、人材育成、特に若手の育成については大きな意味を持つと思います。とはいえ、それは非常に大変なのではないですか?失敗するリスクもあるわけですから。
田中:社長は『失敗のすすめ』という本を出していますが、その考え方は社内でも徹底しています。とにかくやりたいことはやらせる方針。社内では「提案はすべて許可」という言葉があって、お客様のほうを向いている、仮説があるという条件を満たせば、多少失敗のリスクがあってもゴーサインを出します。規模の大小はありますが、申請数は年間数千件に上りますね。まずは直属の上司に申請し、各部門が承認し、最終的には担当部長や役員等が承認します。
当然チャレンジには失敗もつきものです。失敗をすると当然本人は落ち込みますし、短期的には損失もあります。しかし、再トライはいくらでもできる環境なので、失敗をバネにできる人は長い目で見れば成長していきますね。また、このような風土づくりのためには経営陣が常にチャレンジし続けることも大切だと考えています。
前川:そのような環境があるからこそ、世代やカルチャーを問わず多様な人の活躍が実現できているのですね。2020年7月には定年後のシニアの雇用を最長80歳にまで延長することを発表されましたが、これにも感服しました。人生100年時代。2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業には従業員の70歳までの就業確保が努力義務化されますが、御社はそのずっと先を走っていて、シニア層の活躍にも期待されていらっしゃる。
田中:当社では以前から年齢にはこだわっておわず、シニアの方も活躍していましたが、きちんと制度化はしていなかったので、改めて定年再雇用の制度を整備しました。決して、高齢者雇用安定法の改正があったからというわけではないんです。今は70代も20名以上いますし、65歳以上では50名以上いますから、あくまで実態に合わせてということですね。
前川:長年多様な人材の育成や活躍支援に取り組むなかで、私はシニアになっても会社で働ける環境が整うことはよいことだと考える一方で、雇用延長は会社への依存度を高めてしまうのではないかという懸念も感じています。その点はいかがでしょうか?
田中:当社は360度評価も導入していますし、普段から何でもオープンに言い合える風土なので、そこはあまり心配していません。むしろ人生経験豊富なシニアは若手のいいアドバイザーになってくれていますね。
前川:そこもまさに家族主義というわけですね。ただ、それは決して懐古主義というわけではなく、世の風潮に流されることも決してなく、信念の故。それにしてもお話をお伺いしていると独自の人を活かす経営を貫くユニークな会社だと改めて感じました。
田中:私も入社して20年を超えていますが、とにかく飽きない会社ですね(笑)。
前川:今日は直接お話を伺えてよかったです。本当にありがとうございました。
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