「仕事ではなく人を守る」スウエーデン・モデル
もう一つ参考にしたい知見は、弊社主催セミナーでも登壇頂くなどご縁ある日本総合研究所副理事長・山田久氏から献本いただいた『賃上げ立国論』(日本経済新聞出版)です。同書では、スウェーデンについて、➀現役世代(15~64歳、2018年)の就業率が77.5%と高く、②ジニ係数は0.282(2016年)と国民間の経済格差が先進主要諸国の中で最も小さく、③40歳以降でも賃金アップ転職が多い、という驚きの事実が報告されています。その成功要因は、企業と政府と労働組合が「守るべきは仕事ではなく人である」というビジョンを共有し実行しているからだとします。
小国であるスウェーデンが国際経済の中で生き残るには、国の真の競争力を高めることが不可欠。そのためには、労働者が一つの仕事や企業にしがみつくのではなく、将来性のある仕事や企業に移っていくことが国益にも適うという発想です。したがって、能力が陳腐化した労働者の生活を失業保険給付で保障するのではなく、何歳になっても徹底した職業訓練で最新の技術を身につけさせ、職業紹介を通じて高生産性部門で職を得ることを強力に支援する体制をつくり上げたのです。
スウェーデンの事例に考えさせられました。そして、「仕事ではなく人を守る」という観点で、本当の「人に優しい」とは、厳しいやさしさであり、すなわち「常に人に成長と変化を追い求める事」であるという点に、大変共感しました。
このような状況に早くなるように官民挙げて取りんでいくことが必要であると、私も思います。