企業は50代ミドルの独立支援に舵を切ろう《中編》

真のやさしさは、飽くなきスキルアップへの挑戦を促すこと

これに対し日本は、年功賃金・終身雇用を特徴とした日本型雇用で「賃金より雇用」を守ろうとしてきました。その結果、仕事と人が一体になり、「人を守ることが仕事を守る」ことになり、時代遅れとなった仕事を温存させてしまうことで、産業が環境変化に対応できなくなってきました。こうして、日本は世界の中で急速に存在感を失い、過去の国となってしまったのです。

人は変化を恐れ、現状維持を願う生き物です。しかしだからといって、そのままを肯定することは、短期的には人に優しいようでいて、中長期的には実は人に優しくありません。成長する企業・産業への転職・移動を促すべく、ハードな教育訓練を課すことこそ真の優しさです。解雇規制も厳しい日本が仕事=雇用の現状を守ろうとした結果、現在深刻化しているのが、いわゆる「雇用保蔵(社内失業)者」です。これは、会社に所属していながら生産性を上げる業務を与えられていない状態の労働者です。リクルートワークス研究所によると、2025年の雇用保蔵者は、労働者全体の全体の8.2%(415万人)になると予測されているのです。

だから、今こそスウエーデン・モデルを参考にしながら、労働者のスキルアップによる「賃上げ立国」をめざすことが望まれるというのが、山田氏の主張です。しかし、同書でも指摘されているように、この構造転換は一企業、一産業分野でできることではありません。政府のリーダーシップのもと、社会保障・職業能力開発の仕組みの整備、ミドル・シニアの労働市場の整備のバックアップなどがあって、初めて成り立つものなのです。官民あげて、「仕事ではなく人を守る」=何歳になっても人の成長・変化の可能性を信じ、向上を目指すべきなのです。

1 個のコメント

  • スウェーデンの事例に考えさせられました。そして、「仕事ではなく人を守る」という観点で、本当の「人に優しい」とは、厳しいやさしさであり、すなわち「常に人に成長と変化を追い求める事」であるという点に、大変共感しました。
    このような状況に早くなるように官民挙げて取りんでいくことが必要であると、私も思います。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    人材育成の専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「新入社員のはたらく心得」などで400社以上を支援している。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。一般社団法人企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など30冊。最新刊『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)は、発売2カ月で4刷とベストセラーとなっている。YouTube「FeelWorksチャンネル」で働き方のヒント発信中▶https://www.youtube.com/channel/UCQfltGZFasnuK0BWQA8BSjg/