拍車がかかる日本型雇用の欧米化
私は、このコロナ禍を契機に、これまでもグローバル化で欧米型雇用に少しずつ近づいてきていた日本型雇用の変化に拍車がかかると考えています。日本型雇用、いわゆるメンバーシップ型雇用では、一人ひとりの仕事や役割が曖昧なものの、メンバー同士が互いの状況を察し合い、助け合いが生まれることを暗黙の了解としてきました。また後払いで増え退職金まで貰える年功賃金で、仕事の成果と給与もイコールでもありませんでした。そのため、上司が部下を成果で評価しづらいため、なんとなく遅くまで一生懸命に頑張っているという雰囲気や、チームへの貢献姿勢などを見て評価する傾向がありました。
しかし、欧米型雇用、いわゆるジョブ型雇用では、従業員は一人ひとりの職務が職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)で明確に決められ、仕事の成果と給与がイコールとなる即時払い契約で働いている場合が多い。となると、上司の評価を上げるためにパフォーマンスとして残業したり、体調不良や家庭の事情があるときも無理して出社したり、自分の仕事を止めてチームメンバーのサポートを積極的に買って出るということもしなくて済みます。決められた期間内に約束した仕事に取組み、求められる成果を出しさえすれば、上司の顔色を必要以上に気にしなくてよいわけです。
こう書くとドライで冷たい職場のように思えますが、各種調査では、日本より欧米のほうがエンゲージメントは高い傾向があります。もちろん企業活動のみならず政治が優れているからではありますが、デンマークやスウェーデンなど北欧諸国では仕事の生産性が高く、私生活も豊かで幸福を感じている人が多いことは周知のとおりです。日本では表面的には職場でうまくやっているようでいて、心情的には面従腹背でムラ社会的な息苦しさを感じている人が多いのかもしれません。
こう考えると、働き方改革関連法案ができる過程では、「脱時間給」と非難轟々でお蔵入りしてしまいましたが、あらためて時間ではなく成果にコミットして働く働き方を肯定的に捉えるべきではないでしょうか。ホワイトカラーのみならず、日本型雇の長所である企業内人材育成のプロセスを経て一人前に働けるようになった人たちには、「エグゼンプション」を解禁すべきではないかと思います。
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