テレワーク時代に求められる上司力とは? 〜コロナ禍で一変するマネジメント〜《第4回》

【STEP③】「協働意識」を醸成する

ステップ「①相互理解」と「②動機形成」によって、部下一人ひとりの仕事・役割とその意義を腹落ちしてもらったら、次は部下がチームの一員として連携・協力し合えるように協働意識を醸成していきます。協働の意義を理解するには、これからの時代に求められるチームとは何かを再認識することが大事です。

これまでの日本企業の多くは、仕事人間の男性正社員を中心とする「ピラミッド組織」が主流でした。その原型は、昭和の右肩上がりの経済成長を背景とした終身雇用の年功序列組織です。強い権限をもつ上司の下で、社員には個性を活かし創意工夫するよりも、同じ価値観と指向性をもつことが求められ、上意下達で一糸乱れず動くことが尊ばれました。この組織モデルは、高度成長期に大きく貢献した製造業の工場には相性が良かったともいえます。社員は「ポスト」と「報酬」で動機づけられ、過酷な残業や異動や転勤も厭わず一所懸命に働くことで、安定と出世を保障されてきたのです。戦後の焼け野原から経済的な豊かさをつかんでいくために、労使の利害も一致したからこそ機能したともいえるでしょう。

しかし時代は変わり、今の職場は年齢・性別・雇用形態などバックグラウンドも多様なメンバーによるダイバーシティ組織です。一人ひとりの価値観や持ち味もまちまちですし、育児や介護との両立など働き方に制約があるメンバーもいますから、無理やり画一的なチームを作り動かす手法は上手く機能しません。また、企業の終身雇用の維持が困難になるなかで、若手社員を中心に「就社」から「就職」に意識も変わり、組織の命令を部下に強いるやり方は到底通用しません。一人前まで長期視野で育てる日本型雇用の長所は守るべきですが、日本型のメンバーシップ型雇用に馴染んでいない若者ほどキャリア意識も強く、欧米型のジョブ型雇用に適応しやすいかもしれません。

上司は職場をこれまでの「ピラミッド組織」から、「組織の目的」と「個々の尊重」で動機づける「サークル組織」に位置づけなおし、個性の異なる多様な部下どうしの協働の力でチームの成果を上げていけるように導くことが必要になるのです。正に支援型マネジメントが求められる所以です。

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人材育成の専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「新入社員のはたらく心得」などで400社以上を支援している。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。一般社団法人企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など30冊。最新刊『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)は、発売2カ月で4刷とベストセラーとなっている。YouTube「FeelWorksチャンネル」で働き方のヒント発信中▶https://www.youtube.com/channel/UCQfltGZFasnuK0BWQA8BSjg/