若者はもっと怒れ! 〜社会善を追究するために
私は、日本の若者はもっと怒っていいと考えています。もちろん、“私憤”ではなく“公憤”によってです。そして社会課題の解決=社会善を追究してほしいのです。あらためてそう言われると、壮大に感じるかもしれません。しかし、皆さんが日々働いている職場や仕事を通して取り組むことが可能な、様々な社会の課題や改善テーマがあるはずです。SDGsの諸テーマは、その代表的なものです。
そこで、組織や上司からの指示を待つばかりではなく、若手世代が率先して、仕事の進め方や顧客サービスのあり方を見つめ直し、変えるべきは何か、お客様や社会のために今何が必要か、改革をどう実行するか、真っ直ぐな“公憤”によって積極的に組織に働きかけてはどうでしょう。その情熱に共感し支援してくれる人は、きっと現れるはずです。
今回のコロナ禍で、多くの企業でリモートワークが急速に浸透するなど、従来なら十数年を要するような変化が数か月で実現しました。オールドパラダイムの人や組織が「できない理由」を並べては進まなかった働き方改革が、外圧で一気に進んだのです。コロナ禍は明治維新を呼び込んだ黒船のようなものです。黒船は、300年間続いた江戸時代の古い常識に大きな揺らぎをもたらしました。コロナ禍も、これまでの社会や会社の仕組みとルールをつくってきた旧世代に、自分たちの常識への懐疑を抱かせ、自信を揺るがしています。これは、社会善を追究しようとする志のある若者にとって、チャンスの時とも言えます。
人としてかくあらねばならない事のために大志を抱け
「Boys, be ambitious-青年よ、大志を抱け」。
明治の初期に北海道大学の前身の札幌農学校に初代教頭として赴任したW.S.クラーク博士の残した有名な言葉です。博士は、わずか9か月の日本滞在の間に、近代日本の今後を担う若者たちの視野を拡げ、勇気づけ、行動を鼓舞しました。実はこの言葉には、大切にしたいメッセージの続きがあるのです。
「金のためまたは利己的栄達の為にでもなく、ましてや人よんで名誉と称する空しきもののためにでもない。知識に対して、正義に対して、かつ国民の向上のために大志を抱け。人としてまさにかくあらねばならぬ全ての事を達成せんとするために大志を抱け」。

クラーク博士が創った学び舎からは、内村鑑三や新渡戸稲造といった日本の次代を担うリーダーが輩出されました。博士の、国境を越えて人材育成を成した偉業に敬服します。すなわち、若き皆さんは、上司や先輩が自分を認めてくれないとか、自分の考えとは違うからと、すぐに腐ったり諦めてしまってはもったいないのです。自分が世のため人のためを思い、本当に大切だと思う志の実現に向かってこそ、本物の仕事ができるのです。変革のためには、単なる不満や批判を語るだけでなく、自ら今後のあるべき社会や世界の姿を描き、創意工夫して実行する姿勢が不可欠です。自問してほしいのは、「問題はわかった。で、自分は何をするのか?」です。
その上で志の成就のためには、周囲の上下左右の人たちの共感を得て、協力者として巻き込むことが大切です。一人でできる仕事は限られています。上司や先輩の中にも、必ず師と仰げる心ある人がいるはずです。そうした良きメンター(助言者、相談者)を探し出し、応援を取り付けましょう。そして志す変革を成し遂げてください。また、幕末から明治維新に至る激動の時代に活躍した若手リーダーたちに影響を及ぼした吉田松陰は、こんな言葉を残しています。
「かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂」
日本のそして世界の未来を担う若手の皆さんが、そんな逞しい次世代リーダーとなり活躍することを心から期待しています。
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