就職氷河期世代の再チャレンジ施策を考える -潜在的人材の再教育と活躍支援の本格的な仕組みづくりを

首相が「就職氷河期世代」の再チャレンジ支援を指示

さる4月10日の政府の経済財政諮問会議で、安倍首相が「就職氷河期世代の方々への対応は、国の将来に関わる重要な課題」とし、同世代を育て活躍の場を広げるための3年間の集中プログラムを夏までの諮問会議で取りまとめるよう関係大臣・閣僚に指示したことが報道されました(日経新聞5月20日、同電子版24日等)。就職氷河期世代について、同会議の資料では「バブル崩壊後の新規学卒採用が特に厳しかった1993年~2004年頃に学校卒業を迎えた世代」としています。そして、2018年時点の同世代にあたる35~44歳人口1,689万人のうち、フリーター等が52万人、その他の非正規雇用317万人の存在を示し、無業者も約38万人いるといわれており、同世代人口の4人に1人が不安定な就業状況にあると課題提起しています。

この動きに対し、当該世代や長らくこの問題に関わる関係者からは「遅きに失した対応」との声や、同会議資料の「人生再設計第一世代」といった命名が、あたかも当該世代の自己責任や自助努力の課題であるかのようなトーンだとの批判の声などで、ネット炎上しました。

社会全体での取り組みが大事

この世代は、日本型雇用の特徴である新卒一括採用からその後の企業内人材育成が地続きとなった仕組みの恩恵に預かれなかったともいえます。研修やOJT、上司の指導やジョブローテーションなどでのスキルアップ、仕事機会が少なかったわけです。20年以上の負の蓄積で生まれたとても重たい社会課題です。

もちろん、この課題に対する政治や政府の責任は重大ですから、根幹部分は社会保障制度や公的支援策によってしっかりと支えていくことが不可欠です。しかしその前提の上で、企業による取り組みや、何と言っても当事者世代の方々による主体的なアクションが大切です。

いみじくも、中高年ひきこもりや彼らの社会的孤立、反動による殺傷事件も起こるさなか。格差の拡大を放置してきた政府への批判をしている間にも刻一刻と問題は深刻化し続けます。このラストチャンスに、社会全体でどう取り組むか考え行動していかなければいけません。

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人材育成の専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「新入社員のはたらく心得」などで400社以上を支援している。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。一般社団法人企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など30冊。最新刊『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)は、発売2カ月で4刷とベストセラーとなっている。YouTube「FeelWorksチャンネル」で働き方のヒント発信中▶https://www.youtube.com/channel/UCQfltGZFasnuK0BWQA8BSjg/