就職氷河期世代の再チャレンジ施策を考える -潜在的人材の再教育と活躍支援の本格的な仕組みづくりを

中小企業は公的支援による人材を受け入れ、丁寧に一人前に育て上げる育成支援を

一方、企業の99%を占める中小企業では、持ち前のフットワークの良さと、社員一人ひとりの状況に応じたきめ細かく丁寧な人材育成の力の発揮が期待されます。とは言っても、中小企業では慢性的な人材不足や財源不足が課題なことから、公的支援を得ての展開が不可欠です。政府には、これまでの政府による若年無業者に対する相談支援や企業とのマッチングといった就労支援施策や、受け入れ企業への補助金制度などが十分に機能してこなかった反省を踏まえ、小手先の施策ではない大胆な発想による支援の仕組みづくりが望まれます。

例えば、今回の施策専門の半官半民の大型人材派遣企業を立ち上げ、そこが若年無業者を雇用し、人件費の大半を公費で賄いながら中小企業に人材として派遣をして、現場で一人前に育つことを支援するのです。中小企業にとっても人材不足の解消と事業活性化につながれば産業政策としても価値があり、一石二鳥です。それには3年間という短期間ではなく、10年の計で臨むような本腰を入れた取り組みが必要でしょう。

現場の人材育成支援力の向上への公的助成を

就職氷河期世代に限らず、若年無業者の就業支援を考える際に最も根本にある課題の一つは、当事者への働く人としての心理的な支援のあり方です。当事者の人たちには人生における成功体験が少ない傾向があり、自己効力感が持てない状態にある場合が多いものです。それを働く現場で育てていくには、現場の上司やリーダーによる地道な育成支援の力が決定的に重要です。従来も、折角受け入れ企業が門戸を開いても、現場での人間関係が上手くいかず定着できなかった例が少なくなかったはずです。

私たちFeelWorksでは10年以上にわたり、「上司力研修」や「上司力ゼミ」などのプログラムによって、経営者、現場の管理職・リーダー層の部下育成力の向上に取り組んできました。そのなかでは、部下との信頼関係の醸成やコミュニケーションの活性化とともに、部下の職務のなかに「小さなキャリアの階段」を設計し、自力での成功体験を少しずつ積ませることで、自己効力感を高め、自律型人材として自信を持って働き続けられる力を育てる要素を取り入れています。

今回の就職氷河期世代の無業者に対する現場での育成支援では、現場の上司・リーダー層によるこうしたきめ細かい対応力が決定的に重要になります。したがって、施策のパッケージの一環として、各企業に人材の受け入れを促すと同時に、受け入れ企業の育成支援人材の教育・研修に公的助成を行うことも考えられてよいと思います。

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人材育成の専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」などの編集長を経て2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、独自開発した「上司力研修」「50代からの働き方研修」、eラーニング「新入社員のはたらく心得」などで400社以上を支援している。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。一般社団法人企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP研究所)、『年上の部下とうまくつきあう9つのルール』(ダイヤモンド社)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう、転職はさせない!一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など30冊。最新刊『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)は、発売2カ月で4刷とベストセラーとなっている。YouTube「FeelWorksチャンネル」で働き方のヒント発信中▶https://www.youtube.com/channel/UCQfltGZFasnuK0BWQA8BSjg/